アフリカ南下4人旅。
ダナキル砂漠。
サファリ。
ザンジバル島。
バオバブ街道。
アフリカは本当に見所が多い。
4ヶ月での南下はまったく期間が足りないと思った。
そこそこハードなアフリカ旅だったけれど、今の所満足はしている。
そしてついにやってきたアフリカ最後の国ナミビア。
ナミビアにはたくさんの見所がある。
その為、レンタカーを借りて旅をする事にきめた。
初日にナミブ砂漠へ移動。
砂漠に昇る美しい太陽を見た。
そして僕らは次の場所を目指す。
海沿いの街スワコップムント。
スワコップムントを拠点に様々な場所を巡る計画だ。
砂漠にある一本道。
僕らはその一本道をまっすぐに進む。
スリップに気をつけて。
ここは事故が発生しやすい場所だからね。
突如舞い上がる砂埃。
車内に響くきゃりーぱみゅぱみゅ。
何も見えない外の世界。
突如現れた車。
あぁ、ぶつかる。
そう思ったのはすでに遅い。
僕らの車はトラックへとぶつかった。
凹んだ車。
何か水のようなものが漏れている。
動かすのは危険だろう。
警察を呼びレッカーを呼ぶ。
待っている間に考えた。
なぜあそこに車があったんだ。
その理由はトラックの前にあった。
そこにはシマウマの亡骸があった。
迎えに来た車。二手に分かれる僕ら。
炎天下の中僕らはずっと待ち続けた。
僕らは携帯電話を持っていない。
なのでどこに連絡することもできない。
僕らがぶつけてしまったトラックの運転手が警察への連絡やレンタカー会社への連絡をしてくれていた。
今警察とレッカー車がこっちにむかってきている所だろう。
僕らは待ち続ける。
車内は熱気に包まれていた。
すべてのドアをあけ、少しでも涼しいようにしないと。
外で待つには危険すぎる。
そこには太陽の日差しを避けるものなど何もないのだから。
一台の車がやってきた。
その車はトラックのそばに止まった。
そこから降りてくる一人の男性。
トラックの運転手と何かを話している。
僕らに近づいてくる男性。
どうやらトラックの運転手が勤めている会社の人らしい。
彼が言うには、ここにレッカーがきたとしてもその車に乗れるのは二人だそうだ。
僕らは四人。
二人が乗れない。
車が往復してくれるのを待つのか?
いや、そんなに待つことはできないだろう。
街からここまでは片道3時間はかかる。
往復する車を待つとなると6時間後。
太陽ギンギン。
確実に死ぬ。
するとその男性は、僕らに車に乗っていかないかと言ってくれた。
それはありがたい。
僕らも保険のことなどでできればレンタカー会社に早く行きたい。
保険に入っているとはいえ、いくらか負担をしないといけないかもしれない。
それを知らないままは少し不安にも思っていた。
車に乗ったのは僕と変態。
親方と大和田には車の場所で待機をしてもらった。
もうすぐレッカー車がくる。
親方たちはそのレッカー車に乗ってスワコップムントまで。
僕と変態はトラック会社の人の車に乗り込み、スワコップムントを目指した。
なんだか少し申し訳ない気持ちになる。
ぶつけたのは僕らなのに。
いや、まてよ。
そもそもあんな所でトラックを停車させたお前の会社のドライバーが悪いんじゃないのか。
シマウマが死んでいたら停車しましょうなんてルールはないだろう。
それよりも、停車をしたら砂埃がまってしまうから後方に車がある場合は急な停車はいけませんっていうルールのほうがあるべきだろう。
まぁ、そんなのを言っても後の祭だけれども。
“ケ”の日でもあり、“ハレ”の日でもある。
スワコップムントに到着した僕と変態。
けれど、もうすでに夕方を過ぎてしまっていた。
レンタカー会社へ行く手段もない。
今日はレンタカー会社へ行く事はできそうにないな。
僕らはもともと泊まる宿を決めていた。
親方と大和田にはその宿で集合する事を伝えている。
二人が来るのを待つだけになった。
ただ何もせず待っているのもなんだな。
事故の事を考えてしまう。
僕と変態は近くにあるスーパーへ行く事にした。
今日の晩御飯を作ろう。
それくらいの事をして二人の到着を待つのが一番良い気がした。
ナミビアの物価はアフリカの中でも高いほう。
その為僕らは自炊をしていた。
主に自炊の担当は僕がしている。
その為、食材もいろいろ持っていた。
足りない肉や野菜、そして調味料やスープの素をカゴの中に入れる。
普段は節約のために牛肉は買わないけれど、今日は特別な日。
まぁ、事故記念日とでも言えるかもしれない。
ナミビアで事故をした記念日。
そして、誰も怪我をしなかった記念日。
“ケ”の日であり“ハレ”の日。
そう、今日はそんな日。
僕らはビーフシチューを作る事にした。
毎度ありがとうございます。お会計は98万円です。
翌日、僕らはレンタカー会社へ行った。
スワコップムントにあったレンタカー会社。
ここで話をつけて、新しい車を借りればそれでいいか。
そんな風に思っていた。
レンタカー会社に到着し、席に座る。
僕らの担当は体の大きな黒人の男性だった。
彼は車の損傷内容を僕らに話しはじめた。
まぁ、車の事は僕にはよくわからない。
とりあえず、僕が知っているのは僕らの車の前方がぶつかって凹んでしまっているという事だ。
あぁ、水も垂れてたな。
僕らは保険に入っている。
だから、そこまで大きな金額は請求されないはず。
そんな風に思っていた僕らに衝撃の金額が言い渡された。
98万円。
9万8千円ではなく?
いや、9万8千円でもかなり大きいと思ってしまう程なんだけれども。
それが98万円。
いや、何をバカな事を言ってるんだ。
そんなバカな話ないだろ。
保険に入っていた意味がない。
何かがおかしい。
何がおかしいんだ?
どうやら彼が言うには、車は全損の扱いになったらしい。
前が凹んだだけで全損?
そんなバカな。
全損っていうのはもっと凹まないとならないんじゃないのか?
なんなら、あの車はまだ走れるんじゃないかって思うほどだったけれど。
しかし、彼はこれでも保険がきいて98万円に収まっていると言う。
僕らの場合、そのほかにもいろんなものが加算されていた。
車が全損になったため、修理費用ではなく新しい車を買い換えないといけなくなった事。
長距離をレッカー車で移動させた事。
それに付け加え、なんと僕らの契約内容がとんでもないものだった。
僕らが契約していたのは1日にキロ数制限があるプランだった。
1日20キロ程度までが無料。
それ以降、キロ数が増えるごとに料金が加算されていくというものだった。
嘘だろ。
昨日だけで200キロ以上走ってるんじゃないか。
それに今日も20キロなんていう距離じゃない。
その結果、僕らに支払えと言われた金額は保険を適応させた上でも98万円という風になった。
僕は友人から、レンタカー会社はそれぞれ独自の保険をかけてるから、本気でお願いをすれば会社の保険を使ってくれて、客側の負担をもうちょっと減らしてくれる可能性があるという話を聞いていた。
それに、僕らの前にナミビアを旅していて事故をしたメンバーも、最初は支払うように言われていたけれど、後から保険を適応してもらえる事になり、負担額が0になったといっていた。
僕らはなんどもお願いをした。
全額を支払わないなんて言わない。
けれど、98万円は勘弁してくれ。
そんな金額を支払える程、残高はないんだと。
けれどそんな事は通用しなかった。
僕らに支払う能力がなければ、親が払うようにしろ。
一括で払えなくても、分割で払う事ができる。
どうやら僕らは98万円という金額を支払う以外になさそうだ。
98万円か。
決して小さくない金額だ。
命あってこそ次に進めるんだ。
98万円という衝撃的な金額を請求された僕ら。
僕らはそれを支払う事に応じた。
事故をしたのは僕らだし、それはもう仕方ないとも思う。
ちょっと高い勉強なんだって思うしかない。
まぁ、高すぎる勉強代だと思わざるを得ないけれど。
僕らはその後、ナミビアの旅を続ける事にした。
再びレンタカーを借りて。
けれど、もう遠くまで行くのはやめた。
まだまだナミビアをまわりきれてはいなかったけれど、なんだかこれ以上アグレッシブにナミビアの旅をしようという気にはなれなかった。
それに、スワコップムントで車を借りるのは、ウィントフックで借りるよりも高かった。
僕らはもう98万円を支払ったんだ。
これ以上大きな出費をする事に抵抗があるのは当然だろ。
僕らは毎日スワコップムントと観光地を往復した。
観光をしてスワコップムントに戻ってスーパーへ行く。
晩御飯を作る。
そしてお酒を飲む。
それが僕らの楽しみ方。
それでいい。
それがいい。
僕らの旅の楽しみ方なんだから。
なんにせよ僕らは生きてる。
誰かが死んでてもおかしくない事故。
けれど、誰も怪我すらしていない。
かすり傷一つなかった。
まぁ、助手席にいた僕が一番死ぬ可能性が高かったのだけれども。
とにかく僕らは生きている。
それがすべてだろ。
それが答えだろ。
そう。
次に進む事ができる。
そんな風に捉える事が、その時一番大切な事なんだから。
“みなさーん!!事故には本当に気をつけて下さい!!!って事でぽちぃー!!ですよ。ええ。”