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世界5周中の情報系旅人が綴る、世界や旅の情報あれこれ〜たまに恋〜

1年という時間をかけた再会。それはきっと特別なものになる…はずだった。

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2014年の11月。

僕はコロンビアのメデジンで一人の女性に出会った。

偶然の出会いは、運命の出会い。

そんな風に僕らは互いに惹かれあった。

 

出会ったその日に食事へ行き、公園で手をつなぎ、恋人となり、一つのベッドで朝を迎えた。

 

僕はその後、旅を続け、彼女はメデジンに残った。

僕らの関係は終わっても仕方ない。

いつかはふられてしまう、いやふられるならまだいい。

いつの間にか連絡が途絶え、僕らが付き合っていたという記憶はただ薄れていくだけになるかもしれない。

 

そんな覚悟はしていた。

 

 

けれど、僕たちは1年間互いに連絡を取り合い、恋人という関係を続けていた。

僕は彼女の事を好きだったし、彼女も僕の事をきっと好きでいてくれている。

 

 

僕は決心した。

“彼女に会うために、コロンビアへ行こう”

 

人生にはたくさんの選択肢がある。

この選択肢が間違っていないと確信したい。

 

『空港で待ってるね』

 

そうメッセージを送ってくれた彼女。

もうすぐ。

もうすぐ彼女に会う事ができる。

 

そんな気持ちでメデジンの空港に到着し、彼女の姿を探した。

 

 

 

 

けれどそこに彼女の姿はなかった。

 

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 明日の朝。あなたを迎えに行くから。

空港でWi-Fiを繋ぐと、いくつかのメッセージが届いていた。

その中の一つに彼女からのメッセージがあった。

 

『ごめんなさい。今日迎えに行く事ができません』

 

いったい何があったんだろうか。

メキシコのトランジット中にメールを送った時は、空港に迎えに行くというメッセージがあったはずなのに。

あれから数時間は経っているけれど、その間に何か状況が変わってしまったんだろうか。

確かに時間は夜11時をすぎている。

メデジンの治安を考えれば、夜の外出はあまりよくないかもしれない。

 

そしたら僕は今日は空港泊をすればいいんだろうか。

とりあえずWi-Fiも繋がっている事だし、彼女に連絡をしてみよう。

僕はそう思い、メッセージを送った。

 

 

『今メデジンに到着したよ。そしてメッセージを見た。何があったの?』

 

僕はひたすらメッセージに既読がつくのを待つ。

けれど、なかなか既読はつかない。

僕がこの時間に到着するというのを知っているはずなのに。

そして、僕が彼女からのメッセージを読んだあと、何かしら返信をするだろうというのは予想がついているはずなのに。

 

 

僕はこんな事も考えた。

 

 

“え?もしかしてどっきり?”

 

 

とんでもないプラス思考の人間だなぁと自分でもつくづく呆れる。

 

 

既読がつかないまま、時間は流れる。

僕はメキシコの空港で買ったビールを一本、そしてまた一本と飲んだ。

 

まだ彼女からの返信はない。

酒を飲みだすと、人間の思考回路というものはいつも以上に働かなくなるように思えるけれど、時にはシラフでは考えつかなかったような事さえ頭に浮かばせてくる。

 

いい事も。

悪い事も。

 

 

時間はかなり経過している。

どうやら僕の想像した“どっきり”というのはなさそうだ。

まぁ、最初からわかってはいたんだけれど、少しだけ期待もしていたというのも事実。

 

 

 

三本目のビールを開けた時、彼女から返信が届いた。

 

『空港に行けなくてごめんなさい。ちょっと時間が間に合わなくて』

 

『それは構わないよ。僕はどうしたらいい?自分でそっちまで行こうか?』

 

『今日は夜遅いから、明日の朝に迎えに行ってもいい?』

 

 

彼女は僕にそう言ってきた。

何か用事ができてしまい、今日の夜はこれなくなってしまったんだ。

だから明日の朝に迎えに来てくれる。

 

迎えに来てくれるんであればそれでもいいか。

明日には会える事だし。

 

けれど、できれば今すぐにでも会いたい。

メデジンに到着してすぐに会えるものだと僕は思っていたから、それがまた朝までお預けになるというのは少し寂しい気もした。

 

タクシーは彼女の場所へむかう

僕は彼女にこう伝えた。

『できれば、タクシーででもいいから家に行きたいな。雨だし、思ったより空港は寒そうだから』

 

メデジンは一年中が春のような気候。

けれど、雨が降った時は少し冷え込む。

寝袋を出して寝る事になるんであれば、タクシーに乗って彼女の家まで行く方がいいと僕は思った。

 

まぁ、それ以上に僕が彼女に少しでも早く会いたいという気持ちの方が強かったんだけれども。

そこはあえて言わない事にした。

 

『空港で朝まで待つのは大変そう?』

 

『うーん、待てない事はないけれど、朝までここだと多分眠れそうにないから。ここでずっと起きてるくらいなら、君の家に今から行きたいな』

 

『やっぱり私が迎えに行った方がいいと思うから、今から行くよ』

 

『いや、大丈夫だよ。夜だし今から外に出てくるのは危ないかもしれないし』

 

『でも連絡とれなくなるでしょ。空港から外にでちゃうとWi-Fiがないし』

 

『まぁ、連絡はとれなくなるけど、運転手の人に住所と君の電話番号を伝えればなんとかなると思う。スペイン語はあまりわからないけれど、聞き取る事はできると思うし、簡単な言葉だったら多分伝える事もできる』

 

『それで大丈夫?私の家はメデジン市内からも少し遠いし難しいかもしれないけれど』

 

『僕はずっと旅をしてきてるからね。アドレスがわかればその場所に行く事は簡単だよ。ここならWi-Fiもあるし、今の間に場所をしっかりメモしておけば大丈夫。』

 

実際、僕はそこまで不安に思ってはいなかった。

メデジンにくるのは二回目だし、地図のアプリも持っているし。

住所がわかりさえすれば、タクシードライバーに方向を伝える事だってできると思う。

彼女の家がどれだけわかりにくい所にあるかは想像もしていないけれど、それでもよほどの事がない限り彼女の家にたどり着く事に関しては自信もある。

 

 

治安面での不安はもちろんあるけれど、タクシードライバーをちゃんと選べば問題はないだろう。

メデジンでのタクシー強盗という話はまだ聞いた事もないし。

 

 

『タクシーで行くから、タクシーのドライバーに電話番号を教えてもいい?』

 

『うん。私が説明するよ』

 

僕は彼女の電話番号をタクシーのドライバーに伝えた。

そして僕がこの電話番号の持ち主の家に今から行きたいという事と、行き方を彼女が説明するという事も。

 

彼女の電話番号に電話をかける運転手。

まずは僕が彼女と話をする。

 

そして、運転手に携帯を渡し、彼女から行き方を説明してもらった。

運転手が提示してきた値段は80000コロンビアペソ。

日本円だと3000円程度。

メデジンの空港から市内まではかなり距離がある。

まぁ仕方ないか。

深夜という事もあるし。

 

 

『1時間後くらいかな。また後でね』

 

僕は電話越しに彼女にそう伝えた。

そしてタクシーは雨の中、僕の彼女の家へむけて走り出した。

 

1年以上かかった再会。僕は君に会いに来たんだ。

タクシーの運転手は英語がまったく話せなかった。

僕がスペイン語を話すしかない訳だけど、僕がスペイン語を話していたのももう10ヶ月以上前になる。

なんとなく単語は覚えているかもしれないけれど、会話ができるほどではない。

 

運転手は何度も停車をし、他のタクシードライバーに道を尋ねていた。

僕の彼女の家がわかりにくい場所にあるのか、それともこのドライバーがただ道を知らないのか。

それはわからないけれど、今はこのドライバーに頼るしかない。

 

 

『電話。僕の友達。道。方法』

 

彼女に電話をもう一度かけて行き方を聞いてもらおうと思った。

その方が他のドライバーに聞くよりもわかりやすいだろうし、確実だろうから。

 

するとドライバーは僕に携帯を見せてきた。

 

 

 

 

電池がなくなり、電源がすでにきれている携帯電話を僕は手にした。

これじゃあかける事はできないな。

 

『プロブレム。これはプロブレムだ。』

 

到着しない。

このままだと間違いなく到着する事はないだろう。

さっきから何度も道を尋ねているし、その間隔はとても短かった。

少し進んでは他のドライバーに尋ね、また少し進んでは尋ねる。

そんな方法をとっているといつになったら着くのかわかりもしない。

 

 

『充電。電話。充電』

 

僕は時間がかかったとしても、まず彼の携帯を充電する事が必要だと思った。

このまま充電がない状態で彼女の家に到着したとしても、彼女に到着したという事を知らせる事すらできない。

 

 

そう伝えると運転手は近くの屋台に立ち寄った。

屋台には電源がついていて、どうやらそこから充電をさせてほしいとお願いしたらしい。

10分あればどれくらい充電ができるだろうか。

いや、10分じゃ不安だ。

20分充電を待つ方が良いだろう。

途中、またどこかで迷ってしまう可能性も考えられる。

どうやらスムーズにはいかなさそうな道のり、そしてドライバーのようだから。

 

 

外はまだ雨が降っている。

メデジンに到着した時程ではないけれど、どうやらすぐに止みそうな感じではない。

空を見上げても星はないし、フロントガラスにポツポツとあたる雨粒の音だけが静かに響く。

 

 

屋台で携帯電話の充電を終えたドライバーが車に戻ってきた。

僕の彼女に電話をかけてくれるのかと思うと、ドライバーは自分の家族か彼女かわからないけれど、メッセージのやり取りを始めた。

 

 

『僕の友人に電話をかけてください』

 

僕はそう伝えた。

携帯電話の履歴から僕の彼女の電話番号を探し、電話をする運転手。

彼女の家の場所を再度聞き、車を走らせた。

 

 

運転中はメッセージ機能を使い、彼女の家へ向かう。

少しずつ彼女の家へと近づいていく車。

 

もうすぐ会える。

1年以上かかった再会。

この再会が特別なものになるよう、僕は祈る。

 

最初に会ったら何て言おう。

どんな顔をするだろう。

いろんな想像が僕の頭の中を駆け巡る。

 

 

タクシーはどうやら彼女の家の前に到着したようだ。

 

ドアが開き、彼女が表に出てきた。

1年ぶり。

 

 

僕はタクシーのドアを開け、外に出る。

 

『久しぶり』

 

そう言って僕は彼女に微笑みかける。

 

『久しぶり。今日は迎えに行けなくてごめんね』

 

『構わないよ。こうしてここに来る事もできたし。一人でも来れるよって言ったでしょ』

 

 

タクシードライバーにお金を渡し、荷物を受け取る。

そして彼女の家の中へ。

 

初めて入る彼女の家。

今日からしばらくはここで一緒に過ごす。

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

数分後僕はとんでもない事実を耳にする事になった。

 

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いよいよ最終回

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