世界遺産が好きだった僕。
旅の目的は世界遺産を見る為だったといってもおかしくない。
そんな僕が死ぬまでに必ず見ておきたい世界遺産。
ギリシャのパルテノン神殿。
やっと僕はギリシャへ行き、パルテノン神殿を目の当たりにした。
けれど、そこにあったものは僕が考えいたものとは違ったもの。
僕の目にはレプリカにしかうつらなかった。
ギリシャの滞在日数はまだ残っている。
どこへ行くか悩んだ結果、僕はサントリーニ島へ行く事に。
船内で出会った一人の女性。
村上春樹の小説が好きなフィンランド人の女性だった。
僕らはムーミンの話をして意気投合する。
船内の時間はあっという間にすぎ、サントリーニ島に到着した。
『じゃあ、またね』
サントリーニ島で僕らは別れた。
けれど僕はまた彼女と再会する気がしていた。
なぜだかわからないけれど、それは確信に近いものがあった。
だから僕はサントリーニ島で一番美しい時間に一番美しい景色が見れる場所へ行かなかった。
サントリーニ島の奥。
水平線のむこうに沈む太陽を見ながら僕はこう思う。
“彼女なら、夕日を人が見れる理由をなんて考えるだろう”
夕日は沈み、あたりは暗くなってゆく。
1日の終わり。
僕は夕食をとり、宿に戻った。
彼女から届いたメッセージ
宿に戻った僕はWi-Fiをつないだ。
何件かの通知がきている。
LINEだったり、Gmailだったり。
安いフライトチケットを買う為、仕方なしに会員になったサイトからの広告が少し鬱陶しいな。
自動的に迷惑フォルダに振り分けされるように設定しておくべきか。
そんな風に思いながらスマートフォンの画面をみる。
すると、Facebookに一件の友達リクエストがきていた。
僕はそれがすぐに誰かわかった。
彼女だ。
僕はすぐに承認をした。
どうやら彼女は今はオフラインの様子。
食事にでも行ってるのかもしれないな。
僕は宿のベランダでワインを飲んだ。
サントリーニはワインも有名。
赤い色をしているけれど、それは白ワイン。
とても甘いスイートワイン。
その甘さはまるで砂糖を足したのではないかと思うほどの甘さ。
甘いブドウが酸味を帯びたワインになり、再び甘みを取り戻した時、その甘さは元のブドウのそれよりも格段に甘くなっている。
星はそこまで見えない。
サントリーニの町は夜も明るいままだから。
しばらくすると、一件のメッセージがきた。
『こんばんは、sho。元気?』
彼女からだ。
『元気だよ。そっちは?』
『元気。さっきご飯を食べて帰ってきたところ』
『僕もさっき帰ってきたところ』
『今日はなにをしてたの?』
『イアの町を歩いて、夕日を見に行ってきたよ』
『そっか。イアは綺麗?』
『うん。とっても綺麗。まだ他の場所を知らないけれど、僕が考えていたサントリーニ島っていう感じかな。そっちは?』
『こっちも綺麗だよ。真っ白な壁ばっかりで。時々ロバが階段からのぼってくる』
僕らは今日別れてからの出来事を話した。
やっている事はおなじような事だったけど、それが僕らの会話になっているというだけで満足だ。
すると彼女はこんな事を言いだした。
『shoの泊まっている所って明日と明後日空いているかわかる?』
これは一体どういう意味だろう。
shoの泊まっている所とは?
僕の泊まっている部屋?
それとも僕の泊まっている宿の空室?
普通に考えれば後者だろう。
けれど、この時僕は前者である可能性が0じゃないといいなと思っていた。
明日からよろしくね
『んー、どうだろう。空室はあると思うけど、今聞いてみようか?』
『ごめんね。明日からイアに泊まろうと思っていたんだけど、宿の予約をしていなくて』
僕は部屋を出て宿の人を探す。
そんなに大きくはない宿。
宿の人はレセプションにいた。
『すいません。明日はこの宿に空室はありますか?』
『ちょっと調べてみるから待ってね』
そういってレセプションにいた人は明日の予約を調べてくれた。
『明日は満室ね。でも、あなたは明後日まで予約をしてるんじゃなかった?』
『はい。僕は予約をしてるんですが、僕の友人が宿を探していて』
『あなたの部屋はダブルベッドの部屋だから二人までなら同じ料金でいいわよ?』
そんなのわかってる。
それをすぐに提案できたらどれだけ僕も楽だろうか。
『そうですね。ちょっと聞いてみます』
僕はそう言い再び自分の部屋へ戻った。
『明日、ここの宿はいっぱいらしい』
『そっか。ありがとう』
言うべきか。
言わざるべきか。
言うだけならタダだろ。
どう思われるかは別として。
『僕は今二人用の部屋に泊まってるんだけど、もしあなたが大丈夫だったら、僕の部屋に泊まる?』
僕はそう伝えた。
ダブルベッドかツインか。
それはどうしよう。
んー…
まぁいいか…
『いいの?でも、宿の人の了承をとらないといけないんじゃない?』
『いや、宿の人がそう提案してきたんだよ。僕の部屋が二人用だから、二人までなら料金は変わらないからって』
『そうなんだ。じゃあ、宿の料金を半分払うからshoと一緒に泊まってもい?』
『いや、宿の料金はいらないよ。そんなに高くないし、君の好みの宿かどうかもわからないから』
『でも、それだと悪いわ。』
『本当に宿のお金は気にしなくていい。その代わり…』
…
『その代わり、明日僕が質問をするから、それに答えてほしい』
『質問?それは誰でも答えを持っているもの?それとも専門的な知識が必要なもの?』
『わからない。質問に答えてほしいというか、あなたの意見を聞かせてほしいなって思って。ひょっとしたらそれは専門的な知識がいるものなのかもしれない。あるいは。』
『あるいは』
『うん。それとワインを飲むのを手伝ってほしい。どうやら僕はサントリーニのワインは苦手らしくて』
『わかった。ワインは好きだから。何か食べ物も買っていこうかな』
『そうだね。甘いワインに合う食べ物。なんだろう。ギリシャらしい食べ物…』
『チーズかな』
『そうだね。それとオリーブ。ピクルスなんかもいいかもね』
『確かにね。町にはたくさんオリーブやピクルスが売っていたと思う。じゃあ、明日イアに行く前に買っていこうかな』
『部屋に冷蔵庫はあるからそれでもいいけど、僕も買い物をしてみたいな。日本だとチーズやオリーブなんて、もうパッケージに入っているものしか買った事ないから』
『それなら、明日私がイアについたら買い物に行こう』
『うん』
『明日からよろしくね』
『こちらこそ』
僕はそう言って、宿の住所を彼女に送った。
さぁ、大変だ。準備する事はいったいなんだ?
明日から彼女がこの部屋にやってくる。
僕も今日チェックインしたばかりだから、特に汚れているという訳ではないけれど、念のためもう一度綺麗かどうか確認しておいたほうがいいかもしれないな。
そう思い僕は部屋の片付けをはじめた。
まだ数時間しかこの部屋に滞在していないのに。
ドアを開けて右側に部屋のライトのスイッチがある。
上が部屋。
下が入り口付近のライト。
少し歩いて右側に扉。
トイレとシャワー室。
洗面台。
サントリーニらしく、白と青をベースにした洗面所だ。
部屋の作りは簡単なもの。
四角テーブルと二脚の椅子。
小さな冷蔵庫。
テレビ。
そして部屋の奥にダブルベッド。
その奥にはベランダへの扉がある。
僕は入り口から入りなおして、自分がこの部屋に最初入った時の事を思い出しながら一歩一歩進んでみた。
特におかしな所はなさそう。
部屋の準備は整っている。
問題は…
僕の準備か。
とはいうものの、僕はなんの準備をしておけばいい。
特に準備する事はないんじゃないだろうか。
僕は何を準備すべきか考える。
けれど思いつかない。
気持ちの準備か?
そんなものもうできている。
彼女に僕の部屋にこないかと伝えた時から。
僕には準備しておく事はないかもしれない。
ただ、ここで明日になるのを待つだけ。
いや、一つだけある。
“海辺のカフカの続きを読もう”
僕はベッドに寝転び、読みかけの本を読み始めた。
ちょっとまてよ、このベッドは明日ベッドメイキングしてもらえるのだろうか?
まぁいい。
僕が使わなければいいだけの事か。
僕は今日ベッドの上で静かに寝る事にした。
明日ベッドメイキングをお願いする前に彼女がくるかもしれない。
そして朝が訪れた。
“さてさて、このあとどうなるんだ!?そんな風に思っている方は是非ともクリックで明日を待ちましょー!”