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世界5周中の情報系旅人が綴る、世界や旅の情報あれこれ〜たまに恋〜

《ついに事件発生》首に感じるのは生暖かい腕の感触。そう僕は首を絞められていた。

ハバナでBARに行った帰りに知り合ったキューバ人。

彼らがお酒を買うといいだしたので僕はお金を彼らに渡した。

しかし彼らはなかなか帰ってこない。

 

 その記事はこちら。

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お金を持ち逃げされたと思っていたけれど、実はただお酒を探しまわっていたという事実。

僕は、彼らを信用できていなかった事に対し、申し訳ないという気持ちになっていた。

 

その後、彼らとの宴会がはじまり、意気投合する僕ら。

会話は楽しく、笑顔がその場に生まれ、ぎくしゃくした英語とスペイン語、そして僕が教えたばかりの“カンパイ”という言葉が飛び交う。

 

しかし、時間は過ぎていく。

僕は翌日の早朝バスに乗って移動をしないといけないため、帰路につく事にした。

 

僕をバス停まで送り届けてくれるという彼ら。

僕は彼らと共にバス停までの道のりを、楽しい会話と共に歩んでいった。

 

 その記事はこちら。

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 しかし…

 

 

キューバ人の裏切り。僕の首はつよく締められていた。

ゆっくりと歩く僕ら。

その時間が早く終わってしまわないように。

 

だんだんと暗くなっていく道。

僕がここまでやって来た道とはまた異なる場所。

こんな所からバスが出るのか。

しかもこんな時間に。

 

そんな風に僕は思っていたかもしれないし、思っていなかったかもしれない。

 

彼らと一緒にいる事に満足をしていたから。

 

 

 

僕は首の周りに何か異変のようなものを感じた。

それは首の周りに人肌の生暖かい温もりを感じた。

 

僕には一体何が起きたのかわからなかった。

なぜなら。

その腕はどんどん僕の首を締め付けていき、いっこうにゆるむ気配がなかったから。

 

僕はハグの一種なのかとも考えていたのかもしれない。

けれど、決してそれはハグなんかではなかった。

 

 

 

僕は今首を絞められている。

 

 

それを悟った時、他の3人のキューバ人が僕のポケットからiPhoneとiPod touch、そして残っていた現金を奪っていた。

 

走り去っていく3人。

 

 

やばい。

このままだとオチるかもしれない。

 

僕は必死に後ろにいる男に抵抗した。

腕は両方使えたので、肘で脇腹をなんども殴り、かかとでスネを蹴り続けた。

 

 

僕の後ろにいたのは大柄な黒人男性だった。

その4人組の中で一番体格がよく、とうてい僕が振りはらえるような体つきじゃない。

 

けれど、なんとか僕はオチる前にその男から逃れる事ができた。

 

なんども殴り続けた脇腹、それとも蹴り続けたスネ。

どちらかのダメージがピークに達したのかもしれない。

 

僕を解放し走り去る大柄な黒人。

 

 

僕は大声で助けを呼ぼうとする。

しかし、なかなか声がでない。

 

そう、僕はついさっきまで大柄な黒人の太い腕によって首を息もできないくらい圧迫されていたのだから。

 

僕は走って追いかけはしなかった。

ポケットから僕のものを盗んでいった3人はもうきっとどこか僕が見つけられない所に隠れている。

それに、大柄な黒人を見つけた所で勝ち目はない。

 

僕がその時にしないといけないこと。

それはその状況を整理することだった。

 

それもそのはず。

 

 

だって僕は、彼らのことを友達と思っていたんだから。

 

 

キューバ人の裏切り。キューバ人の助け。

意識ははっきりしている。

外傷も特になさそう。

しかし、まだ声はすんなりとはでなさそうだった。

 

静かに、そしてゆっくりと深呼吸をする。

落ち着くことが大切。

今から何をしないといけないのか。

 

まずは警察に行く。

いや、宿か。

どっちにしろ僕にはもう一銭もお金がない。

携帯をとられてしまったのでGPSもない。

 

僕は大通りに戻り、一軒の飲み屋を見つけた。

 

『すいません。強盗にあいました。お金がありません。警察に電話をしてください』

 

僕は何も持っていなかった。

だから宿の電話番号ももっていないし、住所もわからない。

歩いて帰ることは可能だったけれど、さっきあんな事件に遭遇したばかりなのに歩く気にもなれない。

 

僕は落ち着いてはいたけれど、なかなかスペイン語がでてこなかった。

なんとか英語とスペイン語をつなぎ合わせて、僕が今おちいってる状況を説明した。

けれど、伝わらない。

いつもならスラスラと出てくる言葉すら、今の僕には発することができていない。

僕はその場で崩れ落ちた。

こんな時に自分が伝えたいことすら伝えられないなんて。

僕は自分がもっと冷静に物事を考えられる人間だと思っていた。

 

けれど、そんなことはなかった。

 

僕はとても弱く、脆い。

何か起こればそれに過剰に反応し、身動きが取れなくなってしまう。

そんな程度の人間なんだ。

 

 

けれど、今ここで崩れて落ちてても仕方ない。

崩れ落ちるのは最後でいい。

今僕が説明できる事は少ないかもしれないけれど、きっと必死に伝えればそれを感じ取ってくれる人はその場にいる。

 

いや、そう思いたい。

 

すると、僕の周りには人が集まり始めた。

僕の言いたい事を一部理解した人が、その場の人たちに伝えてくれていた。

僕の言葉を理解してくれる人は少なかったが、その場にいた何人かが僕の手にいくらかのお金を渡し、タクシーを停めてくれた。

 

そして僕を宿がある中心地へ連れて行くように説明をしてくれていた。

 

キューバ人に裏切られた直後、キューバ人に助けられた僕。

 

僕はまだキューバが好きでいられるのか、それともいられないのか。

それはまだわからない。

今それを考える時ではないから。

 

今は警察へ行く時だ。

 

 

キューバで警察。そして病院へ。僕は一体なんでこんなところにいるんだ。

警察に到着したのは何時頃なんだろう。

僕は時計も何も持っていなかったので、まったくわからなかった。

 

けれど、他には誰もいない。

僕はまず警察に事情を話した。

英語は少しだけ通じる。

 

大丈夫、僕はさっきよりもずいぶん落ち着いている。

英語とスペイン語を混ぜながら話せばきっと通じるだろう。

 

『道で強盗にあいました。4人組の男です。映画館で出会いました』

 

首を絞められたというのを伝えるために、僕は何度も首を指差した。

 

『首は痛いですか?』

 

そうたずねる警察官。うん。少しまだ痛いし声は出しにくい。

 

『それではついてきてください』

 

そう言われ、僕は警察官に連れられ、外に出た。

外にあったのは警察車両。

僕は警察車両に乗りこみ、2名の警察官とともに病院へいった。

 

病院で事情を説明する。

首以外に痛いところ。ない。

ただ、声が出しにくいだけ。それ以外に外傷はなにもない。

そう伝えると、医者は僕の首を触診した。

一部触られると痛い部分がある。

まぁ、仕方ないか。

あんなに強く首を絞められた事、今までに一度だってないんだからな。

それに相手は大柄な黒人。僕の倍はありそうな太い腕。

 

病院を出た後、僕はなぜか宿に送り届けられた。

宿にいた主人が外に出てきてくれ、警察から事情を聞いていた。

 

宿の主人が、明日一緒に警察へ行ってくれるらしい。

今日はもう遅いから、とにかく休むように言ってくれた。

 

うん。確かに。

時間はもう夜中の3時半をすぎていた。

もうすぐ明け方だ。

こんな時間から、言葉もろくに話せないのに状況説明をするなんて無理だ。

 

今は休んで、明日警察に行くというのが正解だろう。

 

生きているんだから。そう、僕はまだ生きているんだ。

僕と同室の部屋には他に二人の日本人がいた。

一人はメキシコから僕が一緒にキューバまでやってきた女性の旅人。

もう一人はキューバで待ち合わせをした男性の旅人。

 

僕は事情を話し、明日一緒に移動ができない事を伝えた。

二人には先に移動してもらい、タイミングがあえば僕が後から合流するという話にした。

 

『でも、よく生きてたね。』

 

そう。僕は生きている。

というか、むしろ死んでいたかもしれないなんていう事を今の今まで考えてもいなかった。

 

僕はひょっとしたらその時殺されていたかもしれないんだ。

 

強盗が人を殺して何かを奪うなんて事、海外ではよくある話なんだ。

キューバが平和かどうかなんて関係ない。

平和と言われてる日本でだって、毎日のように人が殺され何かを奪われている。

そんな事、日本でだって起こるかもしれない事件。

 

僕はその被害者、ひょっとしたら殺されていたかもしれない。

 

僕は運が良かった。

殺されてはいない。

それどころか、怪我もしていない。

奪われたのはiPhoneとiPodtouchと現金。

きっとその当時の価値で言えば5万円にも満たないものだろう。

 

たった5万円を奪われただけだ。

写真のデータも失われてしまったけれど、それはもう仕方ない。

 

何より大切なものは奪われなかったんだから。

 

 

そう。

僕はまだ生きている。

 

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